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 2000-3 【特集】 塑性加工解析における材料定数の同定 −引張試験と塑性不安定−

【2】応力-ひずみ曲線と変形抵抗(7)

塑性変形の最も基本的な形態は丸棒や帯板の一方向への引張変形であり、材料選定の基本となります。従って引張試験が材料の力学的特性を調べるための試験法として広く利用されており、例えばJISを例にとると、引張試験方法(JIS Z 2241)、試験片(JIS Z 2201)などが規定されています。

引張試験を行う際には、Fig.1に示すように、初期標点距離、初期断面積A0の引張試験片に連続的に増加する引張荷重Wを加え、荷重と同時に試験片の標点距離、または伸びを測定します。このデータから次式を用いて公称応力sと公称ひずみeを求めた公称応力−公称ひずみ曲線を模式的にFig.2(図中の実線)に示します。

公称応力 ・・・(1)
公称ひずみ ・・・(2)

 

Fig.1: 引張試験

Fig.2(a)は軟鋼やA1-Mg合金のように明瞭な上降伏点および下降伏点が現れる材料、またFig.2(b)は銅やアルミニウムのように明瞭な降伏点を示さない材料を表します。図中、点Pが応力とひずみの直線的な関係、すなわち、フックの法則が成り立つ範囲の限界であるとき、点Pの公称応力sPを比例限度と呼びます。また、点Eが材料に永久変形を生じない限界であるとき、点Eの公称応力sEを弾性限度と称します。比例限度も弾性限度も測定の精度に大きく依存するので、実用上は降伏点を評価の対象にすることが多く、工業的な目的には、降伏点を弾性変形の限界とするのが通常です。

軟鋼のように明瞭な降伏点を示す材料の場合、上降伏点syuを降伏点とみなすことも多いのですが、syuの値は試験機の剛性、引張速度などに敏感であるので、安定した値を示す下降伏点sy1を降伏点として採用することもあります。一方、非鉄金属材料のように明瞭な降伏点を示さない材料の場合は、一定の永久ひずみ(通常は0.2%の永久ひずみ)を生じる公称応力s0.2を降伏応力とみなし、耐力と呼びます。

 降伏応力を過ぎると、巨視的にも塑性変形を生じて、試験片をさらに変形させるために必要な応力は増加し、公称応力の最大値(点B)に達します。この最大値sBを引張強さ(UTS)と呼びます。点B、すなわち最大荷重に達するまでは、試験片の標点間の材料はほぼ一様に変形しています。これに対して延性に富む材料の場合、最大荷重点を過ぎると変形が試験片の一部に集中するようになり、外見的には試験片にくびれを生じ、やがて破断に至ります。試験片が破断したときの標点距離および最小断面積Afを測定し、次式で定義される破断伸びσ(全伸び)、絞りφを求め、その材料の延性の目安に使用します。

Fig.2: 引張試験の結果

 

破断伸び ・・・(3)
絞り ・・・(4)

また、最大荷重点Bまでは材料はほぼ一様に変形しているとみなすことができ、点Bにおけるひずみeuを一様伸びと呼びます。

 ここまでに述べた比例限度、弾性限度、上・下降伏点、耐力、引張強さは、すべて各点における荷重Wを試験片の初期断面積A0で割った(1)式の公称応力として定義されています。これに対して(5)式に示すように、荷重Wを各点における試験片の最小断面積Aで割った応力を真応力と呼び、引張試験における真応力−公称ひずみ曲線はFig.2の破線で示されます。

変形が微小の場合は、公称応力と真応力の値にほとんど差がありません。一般的には10%以下のひずみの領域がこれにあたります。しかし塑性加工のように大きな塑性変形を生じている場合は、みかけの応力としての公称応力ではなく、実際に材料の各部に生じている真応力が問題となります。したがって以下では、応力は(5)式で定義される真応力σによって評価することにします。

また、変形が大きい場合には、(2)式で定義した公称ひずみeの使用にも問題が生じます。公称ひずみeには加算性がない(8)ため、変形が大きい場合には(6)式で定義される対数ひずみを用います。は真ひずみとも称します。 

真応力 ・・・(5)
対数ひずみ ・・・(6)

一般に、圧縮は引張りの符号を反転させたものとして解釈するのが妥当ですが、公称ひずみeを用いると無限大の長さに引っ張る場合のひずみは+∞であるのに対して、厚さが極限的に零になるまで圧縮するときのひずみは−1となって有限値になるという不都合があります。これに対して対数ひずみεを用いれば、引張りと圧縮の両極限に対するひずみが±∞となることからも、対数ひずみを使用することの合理性が理解できるでしょう。変形が小さい場合は、公称ひずみeと対数ひずみεの数値的な差はほとんどありません。以下では、単にひずみと称するとき、対数ひずみεを意味するものとします。

引張試験における真応力−対数ひずみ曲線を模式的にFig.3(a)に示します。図中の点Aにおける降伏応力Yは、降伏点または耐力に対応する応力です。図中の任意の点Cで除荷するとεのひずみの一部εeが弾性変形によって回復し、塑性分はεpのひずみとして残留することになります。この塑性ひずみは(7)式のように表されます。   

・・・(7)

 

塑性ひずみを横軸にとって真応力−塑性ひずみ曲線を描くと、Fig.3(b)のようになります。塑性域における応力σは、変形に対する抵抗力を表すので変形抵抗とも呼ばれます。従ってこの応力−ひずみ曲線を変形抵抗曲線と呼ぶことがあります。

Fig.3: 引張試験の真値による整理 一般に、塑性加工で対象とするひずみεの値は大きく、弾性ひずみεeの値はεの値に対して無視することができます。特に断らない限りεpは単にεとして表されます。このような場合Fig.3(b)の応力−ひずみ曲線(変形抵抗曲線)を以下のような関数で近似することが行われます。これらのうち(10)式はよく使用され、指数nはn値あるいは加工硬化指数、Fは塑性係数などと呼ばれます。

(Ludwikの式) ・・・(8)
(Swiftの式)  ・・・(9)
(n乗硬化則)  ・・・(10)

 

    


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