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 2001-2 【特集】 単軸試験によるゴム材料モデルの推定
           −ABAQUS・MSC.Marcによる解析−
【1】はじめに

ゴム材料に対する実用的な解析手法について紹介するにあたり、最近刊行された戦時航空機工業に関する書籍(1)からの引用を以下に示します。 

1942年、交戦下の米国では、撃墜された日本機に塔載されていた三菱重工業製の金星型エンジンに対し調査委員会が設けられ、材料分析を含む詳細な分解調査が行われた。報告者のW・G・アヴンズは、当時のライト社における星型複列14気筒のサイクロン・エンジン開発チームのヘッドであった。SAE Journal誌は14ページにわたってこの調査報告の内容を公表し91)、Automotive and Aviation Industries誌もこれを記事として掲載した92)。調査の結果、冷却フィンの表面積がやや不足気味なのが唯一の欠点とされたが、アヴンズによれば、金星は「特に高性能と言えぬまでも、極めて信頼性の高いものであることは間違いなく、短期間に、また生産設備の未熟な条件下でこれだけのものができるとは信じがたい。」と結論づけている。(一部略)
91) Ovens, W.G.,“Some Notes on Design Features of The Mitsubishi Kinsei Engine” in SAE Jornal, Vol.50,   No.7, July, 1942, pp.253-266.
92) “Mitsubishi Kinsei Engine” in Automotive and Aviation Industries, Vol.87, No.1, July 1, 1942, pp.22-  25, 76-78.

当時、日本の技術者は捕獲した米軍機のエンジンを見て、その動力性能もさることながら、オイルリークのない清潔な外見に驚いたと言われています。高水準の工業製品は、単にその設計思想が優れているだけでなく、製造・検査・流通の全てのプロセスの水準が同程度に管理されていることによって初めて成立します。このとき、シール部材に代表されるような部品類は、外部の専門メーカで製造されることが大半であるので、それらの外注部品が所定の品質で安定に供給されることが極めて重要なポイントになります。

今回とり上げるゴムに関しては、1930年代には米国とドイツで合成ゴムの製造が始まり、1940年には米国United States Rubber社のMooneyが、後にMooney Rivlin則として知られるようになる材料モデルの最初の論文(2)を提出しています。これに対して日本では、戦争中には合成ゴムの製造も始まり、また戦後1947年には久保がゴム弾性に関する成書(3)を著していますが、本格的な合成ゴムの工業化に至るには1950年代まで待つ必要がありました。

三菱重工業の戦時期における航空機エンジンの生産量は5万台、累計5000万馬力、一方、米国の代表的なメーカであるプラット・アンド・ホイットニー社では36万台、累計6億馬力という数字が残されています(1)。台数で7倍、累計馬力で12倍の差を追う戦争であったと言うことができます。その帰趨は置くとして、国力の主要な基盤の一つが基礎工学にあることを、現在の我々は、改めて真剣に認識する必要があるものと考えます。

戦後、国内のゴム材料モデルの研究としては、例えば京都大学の川端季雄先生を中心とするグループに多くの成果があり、その業績は紀要にとりまとめられています(4)。今回はその一門である滋賀県立大学山下義裕先生の実測データを背景として、材料データの実用的な設定方法について検討した結果を紹介します。なお本年9月、川端先生の訃報に接しております。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 Fig.1 金星4型エンジン, 三菱重工業名古屋発動機製作所, 1939-1940頃(1)

 

 

 


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