【1】弾塑性材料の応力−ひずみ曲線−
FEMを用いて弾塑性問題を扱う場合、最初に克服すべき課題は材料データの準備です。実業の分野では、十分な信頼性の下に引張試験のデータを取得することは多くの支出を伴い、更にその試験データをFEM用の入力形式に仕立て直すには、知識を必要とします。また温度依存性やひずみ速度依存性を考慮する場合には、単なる応力−ひずみ関係のプロットだけでは使い勝手が悪く、曲線近似の手法が必要となることも多いでしょう。今回は最も初歩的な例として応力−ひずみ関係のプロットから、Excelを用いてFEMの入力データを作成する手順を紹介します。
塑性変形の最も基本的な形態は丸棒や帯板の一方向への引張変形であり、材料選定の基本となります。従って引張試験は材料の力学的特性を調べるための試験法として広く利用され、例えばJISを例にとると引張試験方法(JIS
Z 2241)、試験片(JIS Z 2201)などが規定されています。
引張試験を行う際には、Fig.1に示すように、初期標点距離l0、初期断面積A0の引張試験片に連続的に増加する引張荷重Wを加え、荷重と同時に試験片の標点距離l、または伸びl-l0を測定します。このデータから次式を用いて公称応力sと公称ひずみeを求めた公称応力−公称ひずみ曲線を模式的にFig.2(図中の実線)に示します。
| 公称応力 |
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・・・(1) |
| 公称ひずみ |
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・・・(2) |

Fig.1 引張試験
Fig.2(a)は軟鋼のように明瞭な上降伏点および下降伏点が現れる材料、またFig.2(b)は銅やアルミニウムのように明瞭な降伏点を示さない材料を表します。図中、点Pが応力とひずみの直線的な関係、すなわち、フックの法則が成り立つ範囲の限界であるとき点Pの公称応力SPを比例限度と呼びます。また、点Eが材料に永久変形を生じない限界であるとき、点Eの公称応力SEを弾性限度と称します。比例限度も弾性限度も測定の精度に大
きく依存するので、実用上は降伏点を評価の対象にすることが多く、工業的な目的には、降伏点を弾性変形の限界とするのが通常です。
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| (a)
軟鋼の応力−ひずみ曲線 |
(b)
非鉄金属の応力−ひずみ曲線 |
| Fig.2 引張試験の結果(1) |
軟鋼のように明瞭な降伏点を示す材料の場合、上降伏点Syuを降伏点とみなすことも多いのですが、Syuの値は試験機の剛性、引張速度などに敏感であるので、安定した値を示す下降伏点Sylを降伏点として採用することもあります。このSylを示す平坦な部分を降伏棚と呼びます。一方、非鉄金属材料のように明瞭な降伏点を示さない材料の場合は、一定の永久ひずみ(通常は0.2%の永久ひずみ)を生じる公称応力s0.2を降伏応力とみなし、耐力
と呼びます。
降伏応力を過ぎると、巨視的にも塑性変形を生じて、試験片をさらに変形させるために必要な応力は増加し、公称応力の最大値(点B)に達します。この最大値SBを引張強さ(UTS)と呼びます。点B、すなわち最大荷重に達するまでは、試験片の標点間の材料はほぼ一様に変形しています。これに対して延性に富む材料の場合、最大荷重点を過ぎると変形が試験片の一部に集中するようになり、外見的には試験片にくびれを生じ、やがて破断に至ります。試験片が破断したときの標点距離lfおよび最小断面積Afを測定し、次式で定義される破断伸びδ(全伸び)、絞りを求め、その材料の延性の目安に使用します。
| 破断延び |
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・・・(3) |
| 絞り |
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・・・(4) |
また、最大荷重点Bまでは材料はほぼ一様に変形しているとみなすことができ、点Bにおけるひずみeuを一様伸びと呼びます。
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